過敏性腸症候群

 胃腸は精神的な影響をうけやすい臓器です。
過敏性腸症候群とは、ストレスが原因で腸の運動や分泌のバランスがくずれ、下痢や便秘、腹痛、腹部の膨満感などが続いたり、繰り返し起こることをいいます。

原因は
 さまざまなストレスが原因となって、腸の運動機能を調節している自律神経に乱れを生じます。
また、過労や睡眠不足、風邪や身体の冷え、不規則な食事、排便時間などがきっかけで、腸管が過敏になるためと考えられています。

主な症状
 便通異常 ・・・ 下痢や便秘、あるいは下痢と便秘を繰り返す。
急に便意をもよおしたり、排便後に残便感などがある。
 腹痛 ・・・ 便意とともに起こりやすく、排便とともに軽くなることが多い。
 ガス症状 ・・・ ゲップ、おなら、胃や腹部の膨満感、お腹が鳴るなど。
 全身症状
 精神症状
・・・ 頭痛、めまい、不眠や眠気、発汗異常、疲労倦怠感、冷え、
生理不順、肩こり、イライラや憂鬱感、ため息、焦燥感など。
 その他 ・・・ のどになにかつかえている感じ。
 
@交替性便通異常
 下痢と便秘を交互に繰り返します。
 腸の蠕動運動が活発になりすぎた場合は、便が早く送られて下痢になります。
 腸が痙攣を起こして、腹痛を伴い、便が硬くなって便秘します。

A下痢型
 大腸の蠕動運動が異常に高まりすぎて、下痢を起こします。
 突然、便意が起こり、腹痛はあまり見られません。
 男性に多く見られます。

B便秘型
 腸管の運動が過度に活発になって、その結果、便が硬くなり便秘したり、ころころした便になります。
 女性に多く見られます。

下痢のタイプと考えられる原因
急に起こる下痢 腹痛と熱を伴う 食中毒、細菌性赤痢、急性腸炎、伝染性下痢など。
腹痛はほとんどない アレルギー性下痢、心因性下痢、過敏性腸症候群、寄生虫病、胃腸炎など。
長引く下痢 痩せてくる 腸結核、糖尿病、甲状腺機亢進、クローン病、結腸ガン、慢性膵炎、膵臓ガンなど。
黄疸を伴う 肝臓ガン、肝硬変、肝膿炎など。
慢性腸炎、大腸憩室炎、尿毒症、食生活の不適当など。
下痢と便秘を繰り返す 過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、結腸ガンなど。

腹痛の起こる場所と考えられる原因
右上腹部
激痛に加えて、吐き気、嘔吐があるときは胆石症。さらに高熱がある場合は、急性胆嚢炎。その他、肝炎、肝硬変、肝臓癌が疑われる。
みぞおち
急性・慢性胃炎・食道炎か食道・胃・十二指腸潰瘍が疑われる。激痛の時は、心筋梗塞、潰瘍穿孔、胃癌が疑われる。
左上腹部
背中までひびくほどの激痛がある場合は、急性・慢性膵炎が疑われる。その他、膵臓癌、大腸癌が疑われる。
へそまわり
へそのすぐ左側であれば、急性・慢性膵炎。へそまわりからおなか全体に広がる場合は、腸閉塞が疑われる。
おなか全体
過敏性腸症候群、急性腹膜炎、腸閉塞、腸捻転、慢性腹膜炎、クローン病が疑われる。みぞおちからしだいにお腹全体が痛くなるときは、食中毒が疑われる。
両脇腹
高熱やむくみ、頻尿、尿の濁りを伴う場合は、腎盂腎炎。激痛と血尿があるときは、尿路結石が疑われる。
右下腹部痛
みぞおちからお腹全体、そして右下腹部へと痛みが移る場合は虫垂炎の疑いがある。
下腹部
子宮の疾患、不正出血がみられるときは、子宮外妊娠が疑われる。鈍痛では、膀胱炎、卵管炎、卵巣炎が疑われる。
左下腹部
下痢を伴う場合は、過敏性腸症候群が疑われる。発熱やひどい下痢を伴うときは、急性腸炎が疑われる。

漢方では
 漢方では、過敏性腸症候群を全体的な症状と併せて、処方を考えていきます。
腹痛 便の状態 その他の症状 漢方薬
張って痛む
お腹を押さえたくない
細い便、コロコロ便
腹部膨満感や残尿感
おならやゲップ
ストレスや環境の変化で悪化
イライラ、憂鬱感、怒りっぽい、落ち着かない、
ため息、喉がふさがる感じ、脇腹や胸部が張る、
生理前に悪化、生理前に乳房が張る、生理不順
加味逍遥散
柴胡加竜骨牡蛎湯
大柴胡湯
半夏厚朴湯
シクシク痛む
張って痛む
お腹を押さえると楽
下痢と便秘の繰り返し
細い便、コロコロ便
腹部膨満感や残尿感
おなら
疲労で悪化、疲れるとイライラする、
手足の冷えまたはほてり、
食が細いまたは食欲にムラ
桂枝加芍薬湯
当帰芍薬散
腹痛は軽度
シクシク痛む
お腹を押さえると楽
下痢または便秘
下痢と便秘の繰り返し
排便後疲労感
食が細い、おいしく感じない、食後膨満感、疲労、
食べすぎで悪化、休むと軽減、四肢が重だるい、
絶えず眠気がある、汗かき
補中益気湯
参苓白朮散
冷えて痛む
温めたり押さえると楽
下痢または便秘
下痢と便秘を繰り返す
お腹が冷える
食欲不振、唾液が多い、冷えや過労で悪化、
疲れやすく元気がない、頻尿で透明
人参湯
大建中湯
冷えてる感じ
温めたり押さえると楽
下痢または便秘
下痢と便秘の繰り返し
便は始め硬く後に軟便
冷えや過労によって悪化、休んだり温めると軽減、
顔色が青白い、元気がなく疲れやすい、寒がり、
腰や下半身が冷える、多尿で透明、夜間排尿、
人参湯
真武湯
腹痛はあまりない 下痢または便秘
下痢と便秘を繰り返す
ベトベト便、
便やおならの臭気が臭い
排便時に肛門に熱感
胃のもたれ、吐き気、お腹が鳴る、腹部膨満感、
冷たい飲食物を好む、尿は少なく色が濃い、
飲酒、辛いもの、脂っこい物のとりすぎで悪化
半夏瀉心湯
甘草瀉心湯
茵陳蒿湯

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